三菱一号美術館でやっていた、「オディロン・ルドン グランブーケ」展。
ルドンの絵は、パリのオルセー美術館で初めて見たとき何故だかとても心に響いて、それ以来ずっと好きな画家の1人。
絵はどちらかというと、暗いと思います。
でも繊細な線から表現される静謐な世界、精神性、哲学性、宗教性、色々なものを感じます。
今回の展示の目玉は、この「グランブーケ」フランス語で大きな花束の意。
とあるお城の食堂の壁に描かれたものだけに、かなり大きな作品で初めて見ました。
ルドンの描く花は、まったくの写実ではなくルドンの心を反映したような、不思議なフォルムをしています。
そしてルドンの使う、透きとおった、静かな深い青。
私はこの青にいつも心惹かれます。
そしてルドンの代表作と言えばこれでしょうか。「La tête」(頭部)。
グランブーケ展にはない作品です。オルセーにあります。
とても繊細な油絵で、目を閉じたまま瞑想でもしているような、キリストを彷彿とさせるような男性の絵。
初めてこの絵を見た時とても惹き込まれました。
他にも仏陀を描いた絵など、静かな思想の旅に誘うようなルドンの作品。
目を閉じて祈るような仏陀、煌めく月、澄んだ空の色。
リーンと澄んだ鈴の音でも聞こえてきそうです。
色を多彩に使い始める前は、版画でモノトーンの不気味な作品が多い。
解説に依ると、ルドン独特の思想でダーウィンの進化論に触発され独自の進化を遂げた植物を表現していたりするそう。
そんな中、ルドンの描いた「オフィーリア」を見かけた。
目のあたりに使われた鮮やかな緑、青ざめた顔色がオフィーリアが正気でないことを表現しているように感じる。
※オフィーリアはハムレットに登場する人物で恋人ハムレットに父を殺されて狂死する美少女
「オフィーリア」は沢山の画家が題材にしていて、色んな作品があるけど私の中で一番のオフィーリアはジョン・エヴァレット・ミレーのオフィーリア。
この絵も高校の時に初めて行ったパリで観て、強烈に記憶に残った絵。
この時初めて「オフィーリア」の存在も知った。
ミレーの写実的な技術にも驚嘆したけど、狂って穏やかな表情で、歌でも口ずさんでるかのような、静かに流れて沈んでゆくオフィーリア像に強烈に惹かれた。
ルドンの絵とオフィーリアに共通するのは、静かな狂気 というか現実を超えた又は超えようとする精神の世界とでも言うか。
穏やかな生と、どこかに死を感じさせる光景。
ルドンの世界に漂う静かで穏やかな「闇」に惹かれて止まない。